科学技術は文化財を救うのか?野外博物館明治村レポート
はい、行って来ました愛知県! 「博物館明治村」
明治村より「森鴎外・夏目漱石住宅」
旧所在地 東京都文京区千駄木町
建設年代 明治20年(1887)頃
かの夏目漱石が「吾輩は猫である」を執筆した住宅。漱石の前は森鴎外が住んでいた。
明治村は明治時代の建築物を保存した野外博物館です。国内で三番目に大きいテーマパークだけあって、全部回るのに5時間はかかりました。東京にも「江戸東京たてもの園」という野外博物館があるけれど、全然規模が違います。
近代建築は文化財の中で今一番アツいといっても過言ではありません。台東区上野の国立西洋美術館(ル・コルビュジエの建築作品―近代建築運動への顕著な貢献―)が2016年に悲願の世界遺産登録へ。ル・コルビュジエに師事した建築家「前川國男」設計の建物の価値も上がってきています。
明治村より「聖ザビエル天主堂」(夜)
旧所在地 京都市中京区河原町三條
建設年代 明治23年(1890)
フランシスコ・ザビエルを記念して作られた教会。
一方で、その身近さから文化財としての価値を忘れがちであったり、野外保存の困難さ、老朽化で壊される建築物も少なくありません。時代と共に生きた建築物を保存しようという野外博物館は、まさに当時の人々の生活をそのままぎゅっと冷凍したような価値があります。良いですねぇ野外、良いですねぇ近代建築。あぁ、野外博物館に住みたい。帝国ホテルの中でティータイム最高でした。
明治村より「帝国ホテル中央玄関」
旧所在地 東京都千代田区内幸町
建設年代 大正12年(1923)
皇居前にあった旧帝国ホテル玄関(夜)。マリリン・モンローがホテルに来日した時には報道陣が池に落ちるほどの騒動だったらしい。
さて、この明治村は夏の期間に「宵の明治村」というイベントが開催されます。通常は17時までの開園のところ21時まで延長。花火やイベントも楽しめます。そこで、ちょっと変わったイベントがやっていたので、紹介します。
「札幌電話交換局」で、夜に参加型プロジェクションマッピングが行われていました。昼は普通の2階建ての石造り建築。(写真撮り忘れた……)
しかして夜になると、このように科学技術と融合されライトアップ!
明治村より「札幌電話交換局」
旧所在地 札幌市大通
建設年代 明治31年(1898)
かつて存在した職業「電話交換手」が働いた場所。明治32年の求人には『13歳以上23歳以下、言動がハキハキして礼儀正しく、「読書」、「作文」、「筆跡」の3つの試験に合格』が採用条件とされていた。所謂、公務員試験。当時の倍率「男29名、女27名 合計56名応募、内男3名、女8名 合計11名合格採用」難関!
スマホを使った参加型プロジェクションマッピングの始まり始まり。
①まずはQRコードを読み込みます。スマホの画面とプロジェクションマッピングが連動。
②最初に現れた色を見て、その色が完成するように色を選びます。ここではパープル。
③さぁ投票が始まりました。イエローとブルーどっち? スマホで選びます。選んだ人が多かった色が全体の選択になり、その色をテーマに映像が始まります。このときはブルー。スマホの画面も連動して映像が流れます。
④次の選択。レッド、ブルー、イエローどれ? ここではレッドが一番多い選択に。赤をテーマに映像が始まります。
⑤ブルーとレッドを足すとパープルが完成!無事成功したので、華やかなエンディングへ。ちなみに失敗すると悲しい音楽と共にクレジットのみ流れます。
これね、けっこう面白くて3回くらい参加しました。画像じゃ伝わらない部分もあって、実際は音楽もついていろいろ映像が動き回ります。電話交換局が丁度良く左右平行上下対称で綺麗な形をしているからプロジェクションマッピングも映えますね。
私も元指定管理で生涯学習事業の企画をやっていたからわかる。これからの時代は「参加型」企画なんですよね。一方通行でただ説明する、受け身で見るだけではなくて、実際に自分たちで作る・体験する・五感で楽しむ。まさに参加型企画こそ新しい楽しみかたなんですよ。その代わりスマホという人によっては参入敷居がある要素を使っているのでね。対象は完全に若者向けでしょう。
これもこれでアリだと思いますよ。プロジェクションマッピング自体は、札幌にある北海道庁旧本庁舎でもやっていましたしね。
科学技術は文化財を救うのか? そんな可能性を感じました。
耳をすませばの舞台は今や過疎地へ~多摩ニュータウン・聖蹟桜ヶ丘探索~
スタジオジブリの名作「耳をすませば」のモデル舞台を知っているだろうか?
東京都多摩市の「聖蹟桜ヶ丘」である。「せいせきさくらがおか」と読む。まるでライトノベルのような駅名。
アニメスタジオの多い三鷹・杉並から近いためスタジオジブリの他作品やFate/stay nightなどのアニメ作品のモデルにもよく使われている。
この聖蹟桜ヶ丘一体が少子高齢化の影響で寂れ始めていると聞き付けたので、「耳をすませば」の舞台を辿りながら郊外住宅の現状を探りたい。
「耳すま散歩」といって決められたルートがあるようだ。駅前のスーパーの二階エレベーター前にマップが置いてある。(場所がわかりにくい。)
開幕早々、長々とした坂を登るところからスタートする。
いろは坂。主人公の雫が帽子をかぶって歩いている坂。
とにかく坂が続く。途中には階段も。
この急斜面はすごい。ここは本当に住宅街なのか?
とすら感じさせる。高齢者はどうしているのだろうか。
ここが映画にも出た有名な階段らしいけれど、正直この階段が出てきた時は「まだ登るのか…………」という辛さの方が大きかった。
野球少年が雫にフラれた神社
バスロータリー。ここが散歩のゴール地点である。ここまで来るのにゆっくり探索しながら歩いて30分程度かかった。
ロータリーには「喫茶店ノア」があり。耳をすませばのクッキーが売っている。店内はジブリグッズがたくさん。カントリーロードが流れていて、とても懐かしい雰囲気の店だ。店員のおじいさんも気さく。
ここで来訪者のノートを読んでみると「大阪から来ました」というコメントまで。確かに女性やカップルの観光客がちらほらいた。観光スポットという意味ではこれからも賑わうだろう。
公園の夜景。雫と聖司が結ばれるシーンに似ているか? 私は住宅街の部屋の明かりが好きで、手前のオレンジっぽい明かりが特に良い。
地球屋のポスト。残念ながら地球屋に似ている喫茶店は無くなっていた。
写真を見て気付いたことがあっただろうか。
一つ目は休日なのに住民の姿が少ないことである。家から出てきていないだけなのか。
二つ目はとにかく坂が多い。階段も多い。
若い内はまだ良いだろうが、足腰の悪い高齢者には住みづらいだろう。バスを使うにしても早朝や深夜は不便である。
少子高齢化の影響か。更地や売却物件もちらほらあった。
この一体は多摩ニュータウンと呼ばれており、戦後の高度成長期に住宅不足から開発された日本最大級の住宅街である。
かつてこうした郊外に戸建ての住宅と家庭を持つことは、日本人が憧れる夢だった。
今や高齢化が進み空き家が増えて、ネットの記事によっては「ゴーストタウン」と揶揄するものまである。都心回帰の流れで、より利便性を求める世帯は引っ越していくという。故郷に帰った人もいるのかな。♪カントリーロード~。
既に23区郊外でも寂れた団地がじわじわ出始めている。東京の人口増加のピークは2025年と予想されている。それから雪崩れるように人口は減少していく。
首都東京ですら少子高齢化による過疎化は避けられないのである。