白と黒の境界線

日々徒然をネットの隅に残す記録簿 専門は社会教育と文化振興

図書館辞めた人たちへ

非正規の乱「図書館員」編 ツイッターで怒りの「辞めた理由」相次ぐ
https://www.j-cast.com/2016/03/08260756.html?p=all

これは1年以上前の記事だ。
ちょうど「保育園落ちた」で大騒ぎになって、保育士や介護士の待遇を改善しようという動きが活発になった頃のこと。Twitter上で「保育士やめたの私だ」と、元保育士が叫びを上げたのと同時期に「図書館やめたの私だ」の声も一緒に上がっていた。

図書館をやめた理由もだいたい「低賃金、雇い止め、頑張っても報われない」などの待遇に関することが多い。図書館員の非正規雇用者はいまや半数以上に昇ると言う。
確かに、図書館員の待遇部分には納得することも多い。自治体によっては雇用問題に発展していて、元館長らが業者を訴えることも何件か見ている。
ただ、だからと言って「図書館員の待遇改善、全員を正規雇用並みに」というのは難しいのではないかなと私は思う。

既に国の借金も膨れ上がっており、巨大な都市であっても財政難の状況である。京都市横浜市などの一見儲かってそうな自治体も財政は厳しい。原因は福祉関係(社会保障費)の出費が激しいことなどがあげられる。高齢化もどんどん進んでいるし、不景気からの貧困問題など本当に日本を取り巻く環境は厳しいと思う。その上、財源は限られている訳だから削られるところは削って、最優先にすべき福祉などに当てていくしかない。

そこでまず最初に削られるのが人件費だろう。よく日本の公務員は多すぎると言われるが、全くそんなことはなく、むしろ少ない方である。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5192.html
働く人の5.3%が公務員で、これは先進国の中でも最低レベルである。
更に自治体としても職員数は年々減らされており、総務省のデータを見れば地方公務員が22年間で連続して減っている。
http://www.soumu.go.jp/iken/kazu.html

仕事は増えるのに職員数は減っている状況。現場はサービス残業が当たり前になっているという。若手公務員の薄給具合もよく耳にする。それでも、とにかくサービスを維持する、より良くするためにも人手は増やさなくてはならない。そこで登場するのが非常勤職員や民間委託職員といった非正規公務員たちである。都内のとある自治体では、正規職員は年々減っているが、非常勤職員は2倍に増えているという。
人件費の他にも、需要の少ない部署の予算(文化関係や箱もの運営など)は削られる。人の命に関わらないような言ってみればルールを作れば民間でもできるようなものは自治体から切り離して民営化する。(小泉、竹中の郵政民営化や派遣法改正の流れ、民間も非正規増えた話もあるけれど、詳しくないので触れない)
結局、財源を確保する方法として人件費を削る、仕事を民営化するなど、とにかく切れるとこは切らないとやっていけない。(そこで安かろう悪かろうも出て来てしまう。)

こんな状況で図書館が人の命以上に緊急性のある価値が創造できるか?

図書館をテーマパークにして、住民や観光客を集め財源を確保するぐらいなら別だけれど。住民の3割程度しか利用していない図書館に十分な予算が回ってくるのか。いや、今の状況じゃあ有料化するとかじゃないと直営は無理だろうなぁ。

もちろん委託費で儲けようという悪どい業者は消えて欲しいし、それで図書館やめた方々は可哀想だと思う。前職が図書館員でした~の転職活動は苦戦するだろうし。いくら頑張っても待遇の面で報われないのも本当に理解できるし、どうにかできるならどうにかしたい。
ただ、私も図書館辞めてわかったことは、「私の変わりはいくらでもいる」ということだ。どんなに低待遇でもやりたい人は後を立たない。生計を立てるためならば、図書館以外の仕事をすれば良い。もしくは、副業で足りないところは補う。
また、民間委託大手では正規雇用もあるし、ライブラリーオブザイヤーで賞を取るような価値を創造する図書館員もたくさんいる。問題もあったが、観光スポットになったTSUTAYA図書館もある。委託や非常勤でも有名大学出身者や図書館学で修士号や博士号をとるその道のプロがいる状況だ。「図書館やめた」と嘆く人たちは、わずかな正規ポストを勝ち取れるような人材であっただろうか。少なくとも私はそうではなかった。

図書館やめた私から言えることは、「非正規はもちろん、委託正規であっても一生の仕事で入ることはおすすめしない。」前にも書いたが、これからも公務員の削減は続いていくだろうし、図書館員自体が機械化するかほぼ非正規化して、この先も厳しい道のりになっていくと思う。保育士や介護士のような人の命を預かる責任のある仕事で、社会の需要に即したものは、真っ先に待遇改善すべきである。
しかし、私は図書館員の待遇改善は緊急性があるのかと言うと残念ながら疑問である。