白と黒の境界線

日々徒然をネットの隅に残す記録簿 専門は社会教育と文化振興

盗んでできた絆 『万引き家族』

金曜夜、レイトショーにて、映画『万引き家族』を観賞。

んー、爽快感だとか感動だとかプラスの感情が沸き上がってくるような映画ではなかった。淡々とした日常から始まり、あまり起伏のない演出が中盤まで続く。後半に物語が一気に動くけれど、終わった後にずーんとくるような感じ。レイトショーなのも相まって皆無言で立ち上がり無言で会場出ていったよね。面白い、つまらないだとは一言で表せない。まるで一つのケースワークを見ているような映画だった。以下、箇条書き。

・設定が詰め込みまくられている。
たぶんこれだけで社会福祉の課題がわかるレベルだと思う。児童虐待、貧困、性、売春、年金、不正受給、窃盗、殺人、嫉妬、ワーキングプア、親無し、離婚、不倫、不妊、家族、愛情、友情。

これ「THE民生」映画ですよ。

・信代さんの「子ども産んだらみんな親なのかよ」という台詞が印象的だった。必ずしも子どもは愛されて育つ訳でもないし、親が無償の愛を捧げられる訳でもない。家族という病。

・血の繋がった家族ではないけれど、家族のように一つ屋根の下で生計を共にする。それは法律で確約された強固な繋がりではないし、社会的にも異様な関係なのかもしれない。それでも「絆は選んで良い」という治の考え方に共感した。子どもは親を選ぶことはできない。親も子どもを選ぶことはできない。だからこそ、絆は選んで良い。

・何だかんだ全部が犯罪で出来ていた。

・盗んだものは最終的に元の場所に戻っていってしまうのだな。祥太は自分で絆を選んで戻らないと決めたのかな。

・町や家族の雰囲気がすごい懐かしい。舞台は東京の下町。なるほどなぁ。前職でこういうの見たことある。てっきり足立、葛飾、江戸川のTHE下町を連想していたら、テレビのニュースを聞けばどうやら荒川区。あの川は荒川か!
夫婦が西日暮里で店をだそうと話していて、谷中銀座のことを思い浮かべた。(三丁目の夕日もここが舞台。)西日暮里、昔良く行ったなぁ。あの辺も確かに貧乏区なんだけれど、谷中に限って言えば地価が高いから意外と下町のふりをした金持ち地帯なんだよなぁ。しかし、谷中周辺には平日の昼間でもプラスチックコンテナみたいなのに座って酒飲んでいるおっちゃんがいる。すごいローカルな話。昔ニコニコ動画でガチムチパンツレスリングっていうゲイの人の動画が流行っていて、その時も「西日暮里ぃ」というような空耳があった気がする。西日暮里の知名度は全国規模だから良いだろう。たぶん。


映画を見て興奮や楽しさを感じたい人にはオススメできない。
ただ、ここには東京の生活の一側面がある。家族とは何かとかね、そういう問題提起もあるんだろうけどね。私は一つのケースワークをじーっと見ているような、民生映画だなぁと。そういう風に感じた。