白と黒の境界線

日々徒然をネットの隅に残す記録簿 専門は社会教育と文化振興

文化財の保存の困難さ

26府県、文化財201件被害…観光に打撃
https://mainichi.jp/articles/20180803/k00/00e/040/282000c?fm=line

<西日本豪雨で、各地の文化財も浸水などの被害を受けた。~中略~ 国の「重要伝統的建造物群」に選定された広島県竹原市の町並み保存地区では、約360棟のうち約40棟が浸水被害に遭った。江戸時代の古い商家が建ち並び、町人文化の面影が色濃く残る。


ビックリした。広島県竹原市の「町並み保存地区」が大規模な被害にあっていたようだ。ここは「安芸の小京都」と言われており、古都の風景をそのまま冷凍保存したような町並みが魅力的な場所だ。竹原には今年の春に訪れていて、楽しい時間を過ごさせてもらった。写真に残したのが被害にあった家なのかは不明だけれど、浸水で畳に泥がつき消毒・乾燥している状態らしい。まだ被害にあってない頃の写真があるので載せる。

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このような町並みが続く。

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お寺。

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公開している家もある。こうした畳の部屋が多くあるのに浸水したとは大変だろう。

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縁側。くつろげる。

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二階から。400年くらい前の景色もこんな感じだったのだろうか。電柱がなぁ……ちなみに東京都は無電柱化を進めている。

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排水はこのような通常より大きめの「側溝」。ブロックではなく、竹だったかな? それで人が落ちないように作られている。

今どうなっているのか心配だ。

竹原といえば世界的にも人気の大久野島(うさぎ島、rabbit island)がある。

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島全体にうさぎが住んでいる。日本の観光は8割が中韓等のアジア圏からの客になる。ここは英語圏の観光客が多い印象だった。

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うさぎは無事だったそうだが、土砂崩れや木が倒れて通行できないところもあったらしい。このような急斜面の場所もあった。ついこの間までそこにあったものが被害にあうのは心苦しい。

学芸員の業務に文化財の修復作業というものがある。保存・修復は高度な技術が必要なのだが、そもそも学芸員の就職状況や待遇はあまり良くない傾向にあり、技術を持つ人たちの後継者の育成が困難化してきている。前職のアルバイトに日本画の保存修復師を目指していた40歳近い男性がいた。大学時代に仏教美術を学び、海外に修復技術取得の留学経験もある。彼は非常勤で修復活動を続けていたが、その道では食えなかったので図書館のアルバイトに転身したのだ。(もちろん図書館も食えないというツッコミはある。)技術力があっても生かす環境がない典型例である。

去る東日本大震災でも岩手県陸前高田市立博物館が津波に襲われ、職員全員が死亡した。

被災文化財を救え 文化庁学芸員、移動・補修へ動く
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY201106170275.html

学芸員実習の際に聞いた話である。この被害の中で、文化財の情報収集や仕訳・整理が日頃からきちんとなされていたため、整合するのも比較的スムーズに行ったという。亡くなった学芸員の方々の仕事振りに感嘆の声が上がった。

私の祖母が20年前に気仙沼に行った写真が残っている。看板や港、山車のようなものが写っていた。写真って昔は二次資料(参考資料的な感じ。本物のおまけ)とされていたけれど、今は写真そのものが芸術だったり、写真に写りこんだものが貴重な資料(一次資料)とされたりしている。Googleストリートビューで、被災前の写真を公開していたりね。写真の価値は上がっている。

参考:東日本大震災から5年、Googleが被災地域のストリートビューを更新。特設サイトで震災前の様子も閲覧可能
https://japanese.engadget.com/2016/03/03/5-google/


日本は観光大国を目指している中で、文化財=観光という視点がスタンダードになりつつある。文化財は保存に大金がかかる割に、収益を上げるのは難しい。意外かもしれないが、京都市なんかは自治体として赤字なのだ。坊さんからは税金が取れない。災害の多さと文化財を守るということ。文化財を通して観光大国を目指すということ。その目的の中で、専門職である学芸員の育成というのは、必要なことであるし、技術があってもワーキングプアってのは本来ではおかしい。まぁ、「学芸員はガン」らしいのでね。いろいろ難しいところもあるよね。それでも、観光で財源を稼ぐと決めたのだったら、その道のプロがやはり必要なのではないか。

モノは人ありきだからね。